数で知る飛騨市の暮らし
飛騨市の暮らしのデータ
飛騨市って一体どんなところ? 地元の人びとはどんな暮らし送っているの? ひと言で説明するのは簡単ではありませんが、”暮らしにまつわる数字”が飛騨市のことを知るヒントになるかもしれません。人口や気温、標高、あるいは森林や川にまつわること……。一見取るに足らないように思える何気ないデータからも、さまざまな顔が見えてきます。数字から飛騨市のことを紐解いてみましょう。
森林率が93%
岐阜県の最北端に位置する飛騨市は、3000m級の北アルプスや飛騨山脈に周囲を囲まれた地域です。「自然豊か」と表現されることの多い飛騨ですが、それは数字を見ても一目瞭然。飛騨市の総面積約792.5㎢のうち、実に93%の約737㎢が森林で覆われているのです。これは東京23区の合計面積(約627.6㎢)よりも、もっと広い大きさに相当します。
谷川の数が250本以上
天然の水資源が豊富なこともまた飛騨市の魅力です。冬の間に飛騨の山々に降り積もった雪はやがて解け、250本以上もの谷川となって市内を流れます。飛騨市の農地の90%以上がその谷川から水を引き、ミネラル豊富な水が飛騨市の美味しい農作物を育てるのです。いまでも山水と市の上水道、2つの蛇口を持つ家もあります。
年間88日も朝霧が発生
飛騨市の1日の寒暖差は年間を通じて10 ℃前後と大きく、その気候の恩恵で米や野菜、果物などが美味しく育ちます。これは昼に作られた栄養が、寒い夜ほど多く蓄積されるためです。また、昼夜の気温差が大きいことから年間に88日も朝霧が発生。降雨量は決して多くない飛騨ですが、霧のおかげで大地が湿り、農作物がよく育つのです。
薬草が245種以上も自生
245種類以上もの薬草が自生する飛騨市の野山は、まさに天然の薬箱。風邪にはユキノシタ、切り傷にはオトギリソウというように、飛騨地方の人々は昔から薬草を体に取り入れ、健康を保ってきました。その暮らしの知恵は飛騨市の薬草体験施設「ひだ森のめぐみ」でも学ぶことができて、薬草を使ったティーセレモニーや薬草七味作り、薬草の入浴剤や香り袋つくりなども体験できます。
人口密度が1㎢あたり約30人
面積のほとんどを森林が占め、人口も比較的少ない飛騨市。人口密度は1㎢あたり30人程度と低め(2022年1月1日時点)。1㎢に約1.5万人も暮らしている東京都と比較すると、かなり差があることがわかります。4町別の1 ㎢あたりの人口密度を見ると、古川町143人、河合町5人、宮川町3人、神岡町25人という数字に。
標高差800mの暮らし
200m(宮川町鮎飛、神岡町谷など)/「ぶり街道」と呼ばれた富山、飛騨、信州を結ぶ街道が通るエリア。今でこそ、内陸部でもブリを手軽に口にすることができますが、かつては大変貴重な魚。富山湾で水揚げされたブリは塩漬けにして、歩荷(ぼっか)という山を越えて荷物を運ぶ人たちによって山国の飛騨や信州へと運ばれました。飛騨エリアではいまでも年取りのご馳走として、富山のブリを大晦日に食べる伝統が残っています。
500m(古川町本町など)/古川盆地に囲まれ中央に川が流れるこのエリアは「飛騨の米どころ」と呼ばれています。山岳地帯で作付け面積は少ないですが、肥沃な土壌、豊かな水、昼夜の大きな寒暖差など、美味しいお米が育つ条件がすべて揃っていて、米の国際コンクールで金賞を受賞するほど。多くは地元で消費されるので、飛騨市を訪れたらぜひ地元のお米を味わってみて。
1000m(神岡町和佐府など)/神岡町和佐府の一帯には7つの集落があり、通称「山之村」と呼ばれています。気温が−20度になることもある豪雪地帯で、冬季は雪の中に閉ざされる土地でした。そのため、寒干し大根をはじめとする保存食文化が発達。自給自足の暮らしが根付いています。飛騨ほうれんそうやホワイトコーンといった高冷地野菜の生産地でもあります。
森林の70%以上が広葉樹
飛騨市の森林率は9割を超えますが、その7割以上をブナやミズナラといった天然の広葉樹が占めています。針葉樹とは異なり、広葉樹は毎年大量の葉が地面に落ち、それらが腐葉土となって豊かな土壌をつくり、土壌に浸み込んだ水に栄養を与えます。飛騨の自然の恵みの源は広葉樹から。そういえるほど重要な役割を果たしています。
飛騨市で出会える広葉樹
栄養たっぷりな土壌と美しい水を生み出し、飛騨市の豊かな自然を育む広葉樹。ここでは飛騨市の野山で出会える数ある広葉樹の中から代表的な木々を紹介していこう。
ブナ
ブナ科。原生林の素晴らしさと自然の豊かさを象徴する木として「飛騨市の木」と定められています。日本の温帯を代表する大型の落葉樹で、時間をかけてゆっくり成長して、大きいもので樹高が30m、幹の直径が1.5mほどに達します。5〜10年周期で実がなって、野鳥やリス、ノネズミ、クマといった山の動物たちの重要な食糧にもなります。
ホオノキ
モクレン科。飛騨地方を代表する郷土料理でもお馴染みのホオノキ。20〜40cmにもなる大きな葉は、殺菌効果や芳香もあることから「朴葉寿司」「朴葉餅」に使われたり、燃えにくいことから「朴葉味噌」のように火の上で調理するのに利用されることも。ホオノキは大きいもので樹高30mにもなり、花も直径15cmと日本最大の大きさを誇ります。
クロモジ
クスノキ科。若枝の樹皮に黒いまだらが浮き出ることから「黒文字」という名前に。枝を折ったときの芳香は日本の樹木でも最高級のよい香りとされ、和菓子の高級楊枝の材料にも用いられたり、精油をとって香水などにも使われてきました。枝を乾燥させてお湯で煮出せば、ハーブティーとして飲むこともできます。低木で庭木としても育てやすい樹木です。
ミズナラ
ブナ科。日本の広葉樹を代表する身近な木のひとつ。水分が多く燃えにくいことから、この名で呼ばれています。「ジャパニーズオーク」の名で海外にも輸出されており、家具材として世界的にも大変な人気があります。国内ではウイスキーを熟成させる樽に使用されることも。ノコギリのようなギザギザした葉っぱが特徴です。
クリ
ブナ科。秋の味覚として親しまれるクリの木。実は、知る人ぞ知る優良な木。縄文時代から食材だけではなく、木材として積極的に利用されてきた歴史があります。木材の特徴として、粘りがあってしなやかで折れにくく、水に強くて耐久性に優れているため、建物の土台や、鉄道の枕木として活躍してきました。成長すると樹高15m、幹の直径が80cmほどになります。