ひだで野あそびを
2022/10/19

ひだで野あそびを

子どもから大人まで自然に還ろう

飛騨市の魅力は、野遊びを抜きにしては語れません。川は釣り人たちの憧れの的。清らかな流れのなかを大きなアユやイワナが泳ぎ回っています。山は初心者から上級者までを懐深く受け入れて、神秘的な雲海や眼下に広がる飛騨市の町といった絶景を見せてくれる場所。春から秋は大自然に抱かれるワイルドなキャンプが楽しめます。冬はパウダースノーが降りつもる夢のようなゲレンデへ。ここにしかない自然を遊び尽くそう。

登る&歩く

3000m級の北アルプスの峰々に囲まれている飛騨市では、近くの山に少し登っただけでも驚くほどの眺望が目の前に広がります。初心者が登りやすい山も多く、日帰りで気軽に歩ける自然スポットが点在。時間や季節を選べば、朝霧や雲海といった幻想的な絶景に出会えることも。市街地と山が近いので、ぜひ町歩きとセットで楽しんでみましょう。

天蓋山

仏像の頂上にかぶさる衣笠に形が似ていることに由来する「天蓋山」。山頂までは歩いて約2時間で、日帰りでも訪れやすい山です。山頂からは、立山連峰、白山、御嶽といった3000m 級の山々の大パノラマが広がります。このあたりは「にほんの里百選」に選ばれているエリアでもあり、昔ながらの原風景が残る山里の散策もおすすめです。

猪臥山

飛騨古川の町から車で1時間の場所にある絶景スポット。山頂からは、立山連峰、白山、御嶽、乗鞍岳、穂高連峰といった山々が拝めるほか、眼下には飛騨の町が広がります。季節を問わず、朝は霧海(むかい)がたちこめることでも知られるので、早起きしてご来光を見にいくと太陽と霧が織りなす神秘的な光景に出会えるかもしれません。

安峰山

登山口から山頂までは約1時間半。展望台へは駐車場からわずか30m。そんな身軽さで訪れることのできる安峰山の展望台からは、御嶽、白山連峰、白木ヶ峰に加え、趣深い古川の町が一望できます。9〜11月の朝は晴れていれば朝霧が出ることが多く、幻想的なひとときを味わえることも。

白木峰

飛騨市と富山市の境にある山で、山頂までは40分。駐車場から尾根沿いに登山道が伸び、景色のいい山登りが楽しめます。日本海側からの風雪によって樹林が育ちにくいことから、山頂では360°の大パノラマで立山連峰や日本海まで見渡せます。奥には高層湿原が広がり、初夏にワタスゲやニッコウキスゲが見頃を迎えると一面が花畑に。

黒部五郎岳

日本百名山の一つであり、北アルプスの最奥に位置するために縦走でしか辿りつけない上級者向けの山。標高は2,840m、飛騨市の最高峰です。雄大な自然をひとりじめする贅沢な登山が楽しめます。見どころは頂上の稜線が氷河に削られて窪んだ“カール地形”。花の百名山でもあり、色とりどりに咲き乱れる高山植物が美しい山です。

池ケ原湿原

約6ヘクタールという広大な面積をもつ県内最大級の湿原。飛騨市の「天生湿原」「深洞湿原」に並ぶ三湿原回廊の一つです。4月下旬から5月中旬にかけて見頃をむかえるミズバショウやリュウキンカの群生は一見の価値あり。駐車場や木道はバリアフリーになっていて歩きやすく、子どもからお年寄りまで三世代で楽しめます。
 

天生県立自然公園

湿原歩きから籾糠山登山まで、体力や経験に合わせてコースを選べる自然公園。ミズバショウやニッコウキスゲが咲き誇る高層湿原をはじめ、ブナやカツラの巨木による原生林、北アルプスを一望できる籾糠山などがあります。高山植物の観察やバードウォッチングを楽しみつつ、ダイナミックな自然の中を心ゆくまで散策しよう。

朝霧の森

“朝霧たつ都”と称される飛騨古川を象徴するスポット。カツラの木が生い茂る美しい森で、早朝には神秘的な霧がたちこめます。南北に伸びる2つの遊歩道は、いずれも30分ほどで歩けるハイキングコースです。南ルートの中腹には飛騨の薬草を集めた薬草壇も。爽やかな木漏れ日がふりそそぐなか、薬草について学びながら歩くのも楽しい。
 

キャンプ

 
都会ではまず味わえないワイルドな野遊びを堪能できるのが飛騨市のキャンプ。清流での水遊びや釣り、絶景に出会える登山、爽やかな森林浴、癒しの温泉など、いろんなアクティビティを組み合わせるスタイルが人気です。名物の飛騨牛と採れたての新鮮野菜で楽しむBBQ、夜空を彩る満天の星に至るまで贅沢なひとときが待っています。
 
 
  • 山之村キャンプ場
  • なかんじょ川つり公園キャンプ場

雪遊び

日本屈指の豪雪地帯ならではのフワフワのパウダースノーが飛騨市の自慢。知る人ぞ知る隠れた穴場で、リフト待ちの行列に並ぶことなく心ゆくまで雪山をすべり尽くせます。近年は寒敷(かんじき)のようなスノーシューを履いて、雄大な北アルプスを眺めながら冬山散策に出かけるのも人気。冬の絶景をアクティブに満喫してください。
 
 
〈雪遊びスポット情報〉
ひだ流葉スキー場/飛騨かわいスキー場

薬草ティーセレモニー

面積の9割以上を森が占める飛騨市には、なんと約245種類以上の薬草が自生しています。薬草体験施設「ひだ森のめぐみ」では、オリジナルの薬草茶を作る「薬草ティーセレモニー」をしているので、気軽に薬草使いを知ることができます。里山で採れたイノコヅチ、クロモジ、スギナ、イチョウ、ヨモギといった薬草をブレンドし、その日の体調や気分、好みに沿ったお茶をいただくことができます。

釣る

やってきた釣り人たちが驚くほど大きい飛騨市の川魚たち。山から流れ出したミネラルのおかげで水中に良質なコケが生えやすく、栄養をたっぷりとれた魚たちは元気いっぱいに大きく育つというわけ。とくにナタのように大きなアユは地元では「なたべらアユ」という名でおなじみ。釣ったその場で塩焼きにして食べると絶品です。

〈釣りスポット情報〉
宮川/高原川/小鳥川/稲越川

教えて釣り名人! 飛騨アユ釣りの魅力

飛騨の野遊びのなかでも、ここでは川に注目。飛騨は全国の釣り人たちが憧れる川の宝庫。なかでも「一度はあそこで釣りたい!」と釣り好きたちが熱をあげているのが「宮川」の下流域です。というのも、津々浦々のアユ釣りでチャンピオンの名をほしいままにしてきたアユ釣り名人が、この地のアユに惚れこんで川のそばに移住したから。宮川に生きるアユたち、いったいどうすごいんでしょう? アユ釣り界の生ける伝説・室田 正さんに飛騨の川の魅力を聞きました。
 
 
「初めて宮川に出会ったときはもうワクワクしてね、なにしとるかわからんかったよ! こんな川がこの時代にまだ残っとったんか〜! ゆうてね」
 
 
京言葉で愛嬌たっぷりにそう語るのは、アユ釣り界のレジェンド・室田 正さん。釣り歴62年、京都に生まれ、数々のアユ釣り大会で優勝してきたカリスマ釣り師です。桂川からはじまり、青森から九州まで、はては海外でも最高のアユを訪ね歩いた室田さん。そして辿りついたのが、岐阜県飛騨市の宮川下流だったと言います。
 
「ここのアユはとにかく暴れるからめちゃくちゃ面白い!プリっとして、追い星が死んでも消えないんです。秘密を握るのは飛騨の山。広葉樹が多く、保水力が高くて、じっくりと雨水を濾過しながらミネラルをたっぷり含んだ水を川に注ぐ。宮川下流にはテーブルみたいに大きい岩がゴロゴロあり、そこにきれいな苔がつくんです。つまり最高のアユが育つ条件が見事に揃った場所なんやね」
 
アユたちにとっては、おいしい苔が食べ放題。それぞれのテリトリーで朝4時から夜7時頃までモリモリ食べて、なんと大人の腕ほどのサイズにまで育つんだとか。釣り人たちが引き上げたあとの静かな夕方の川で釣る好きだという室田さん。竿がぐんぐんしなり、糸が鳴くほど大暴れするアユと格闘して、やっと釣り上げたときは「おまえ、ようひっぱったなあ!」とアユの健闘を称えると言います。
 
 
 
 
この宮川下流に放流されるアユは40万尾。琵琶湖産で気性も荒く、初心者でも釣りやすいそう。もちろん、川にはイワナやヤマメといった川魚の姿もあり、なんとウナギの稚魚まで放流されているんだとか。ビギナーにとってもベテランにとっても最高の川といえそうです。
 
食べるなら、どんな食べ方が好きですか? 室田さんにそう尋ねたら、笑顔で「塩焼き!」。
 
 
「新鮮なアユにさっと塩をふって焼く。そらもう絶品よ! よく爽やかでキュウリみたいな香りがすると言われるけど、真骨頂は内臓。宮川下流のアユは内臓を食べなあかん。ほろ苦くて、じんわりと甘いのよ」
 
 
その極上の味を食べてみたいと思ったら、ぜひおみやげの店「さわ」へ。ここには、「ぼっか煮」と呼ばれる川魚の多彩な甘露煮が並んでいます。魚を素焼きにし、醤油や砂糖、お酢などを入れて煮た飛騨名産の保存食です。2021年からは、急速冷凍による「アユの塩焼き」の販売もスタート。電子レンジで加熱すること1分、焼きたてのアユの味が楽しめます。
 
訪ねたこの日、幸運なことに室田名人が釣ったアユも塩焼きになって並んでいました。いただいてみると、皮はパリッと身はふわふわ、たまごがたっぷり。そして茶色い内臓は、苦いけれど匂いはなく、やさしい甘みと塩気がおいかけてきて、ずっと食べていられそう。
 
こうしたアユグルメに確実に出会うとしたら、網漁がはじまる8月以降が狙い目。「さわ」では今後、通販も予定しているそうですよ。なお、飛騨市では室田名人とともに「飛騨のあばれ鮎」の名でブランド化にも取り組んでおり、東京や京都の高級料亭などにも出荷されています。とはいえ、やっぱりオススメは現地での実食! 焼きたての天然アユの美味、ぜひ味わいにきてください。

 

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